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自費と保険の根管治療・精密根管治療の違いを歯科医師が解説!成功率?マイクロスコープ?ラバーダム?何が違う??

  • Hatch Dental Clinic
  • 2023年7月24日
  • 読了時間: 6分

更新日:19 時間前


マイクロスコープ・ラバーダムによる精密根管治療
マイクロスコープ・ラバーダムによる精密根管治療

今日は、とても聞かれることの多い


『自費と保険の根管治療、なにが違うのか?』


という点についてお答え致します!




近年、患者様の歯に対する意識の高まりと共に、

精密根管治療(一般的に自費の根管治療を意味します)を求める患者様が増え、

抜歯してインプラントの時代から、なるべく歯を残す方向へシフトしています。



 また、根管治療によって歯を残す治療が浸透するにつれて、歯の中の神経(歯髄)まで保存するニーズが高まり、より保存的な治療が求められるようになりました。


それに伴って、精密根管治療を行う歯科医院が急増したように思います。



しかし、精密根管治療が良い、ということはわかっても、

保険と何が違うのか?というのははっきり理解している方は少ないのではないでしょうか。


なので今回は、当院における保険根管治療と自費根管治療(精密根管治療・マイクロエンドなど言い方は色々ありますが)の違いについてご説明させていただきたいと思います。




まずは表を示し、各項目の詳細を後述していきます。



保険の根管治療

精密根管治療

CTの撮影

撮影できる症例が限られる

必ず撮影

マイクロスコープの使用

必要に応じて使用

必ず使用

マイクロスコープ専用ツールの使用

必要に応じて使用

必ず使用

ラバーダムの使用

必要に応じて使用

必ず使用

薬液

組織への為害性が低いものを使用

最善の薬液を使用

根管充填

従来の根管充填剤

MTA, バイオセラミックマテリアル

処置時間

時間に限りあり

長い処置時間を確保する

処置回数

回数に限りあり

完全に根管内がクリーンになるまで行う

成功率

​50%前後というデータあり

90%以上


*CTは被ばく線量の関係で制限することもあります。



以下、各項目についてご説明させていただきます。




・CTの撮影


保険治療であってもCTを撮影することができますが、適用範囲は限られます。

必ず撮影できる訳ではありません。


根管治療の際には、顎全体を撮影する『パノラマエックス線写真』に加えて、部分的な『デンタルエックス線写真』を使用しますが、CTを利用することでしか分からない3次元的な問題はあります。

少なくとも、無いよりもあった方が、治療の確実性が増加します。





・マイクロスコープの使用


根管治療には必須と言ってもいいほどのツールです。

当院では保険治療においても極力使用しておりますが、100%は難しいのが現状です。





・マイクロスコープ専用ツールの使用


根管の細かいところを清掃する器具になります(詳しくはこちら→『みえる』だけでは意味がない。『とどく』ためのツール)。


主にマイクロスコープ下で使用します。

保険の根管治療ではあまり使用しません。


基本的には、精密根管治療の徹底的に根管内を清潔にするフェーズで使用します。





・ラバーダムの使用


こちらも当院では保険の根管治療でも極力使用しておりますが、一般的には保険の根管治療では使用しないことが多いです。

(ラバーダムについてはこちら





・薬液


根管内を洗浄する薬液にはさまざまな種類がありますが、中には少し強めの薬液もあります。


そういった薬液を使用する際には、ラバーダム防湿下において洗浄、

およびキャビテーション(超音波で泡を発生させ、洗浄効果を高める)を行うのが好ましいです。


そのため、しっかりと根管洗浄を行うためには、根管治療のための環境整備・処置時間の確保が条件となります。

(根管洗浄についてはこちら





・根管充填


最終的に詰めるお薬、根管充填材として使用するMTAは、現在はまだ薬事未承認となるので(ブログ執筆時)、

保険治療では認可されておらず、使用することができません。


保険治療で根管充填を行う際には、従来の根管充填材を使用します。

殺菌効果は基本的にはなく、根管内を封鎖する目的が主になります。





・処置時間


上記のような精密な処置を行うためには、それぞれに対して時間がかかります。

保険内で根管治療を行う際には、どうしても限られた時間内で行わなければならないため、処置内容にも制限が出てしまいます。





・処置回数


一般的なイメージとして、根管治療は処置回数がとても多くかかるものと思われがちです。

しかし、回数が増えれば増えるだけ成功率が低下するというデータがあります(抜髄の際)。


これは根管治療中の仮蓋(仮封)を100%緊密にする事が難しいため、細菌を含む唾液などが中に入ってしまうからです。





・成功率


保険治療における成功率は、日本においては非常に低いというデータがあります。


歯の部位によって違いはありますが、45〜70%の確率で根の病気(根尖性歯周炎)があるというデータがよく参考にされます。

『根管処置歯における根尖部X線透過像の発現率(2005.9〜2006.12 東京医科歯科大学)』


これはつまり、それだけの数が失敗に終わっている、ということです。



初めて来院した患者様のレントゲンを撮影してみた際に、根尖性歯周炎がある歯がだいたい全体の半数ほどであるのは、私自身よく感じています。

なのでこのデータは概ね正確である気がします。



当院での精密根管治療では、成功率は90%ほどです。

精密根管治療を行なった歯で再治療が必要となる事はあまりありません(場合によっては外科的歯内療法との併用になる事があります)。





以上が、当院における保険の根管治療、精密根管治療の違いになります。

しかし、費用が高額にはなりますので、必ずしも精密根管治療でなければならない、ということはありません。

ご相談の上、ご自身に合った方法を選択されるのがよろしいかと思います。





結論:根管治療の選び方は「自分の歯をどう残したいか」によって変わる



根管治療には、「保険診療」と「自費診療(精密根管治療)」という2つの選択肢があります。


どちらにもメリット・デメリットはありますが、その違いは単なる“価格差”ではなく、歯の寿命や再発リスク、治療精度の差に直結します。


保険診療の根管治療は、費用負担を抑えながら必要最低限の処置を受けることができる一方で、

器具・材料・治療時間に制約があるため、

再発のリスクや予後の安定性に不安が残るケースもあります。


それに対して、自費診療による精密根管治療は、

マイクロスコープやラバーダムなどの専門機器を使用し、時間をかけて丁寧に処置を行うことで、治療の成功率や長期的な予後の向上が期待できます


つまり──あなたが




「どれだけ歯を長持ちさせたいか」




その価値観によって、最適な選択は変わるのです。


当院では、保険診療・自費診療のどちらについても丁寧にご説明し、

患者さん一人ひとりに合わせた治療をご提案しています。


「自費と保険、どちらの根管治療が自分に合っているか分からない」そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。

精密根管治療のメリットや、保険診療の限界点まで、しっかりとお話させていただきます。


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