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包括歯科治療とは?
多くの患者様が、経年にわたりさまざまな歯科治療を経験しています。これにはむし歯治療、根管治療、歯周治療などが含まれ、これらの治療を何度も繰り返しながら現在の状態に至っている方が少なくありません。歯科医師として、患者様のお口の中を診させていただく際、被せ物や詰め物が多数施された状態に遭遇することは珍しくありません。これは、過去に発生した歯科疾患に対処するために行われた治療の証でもあります。
これらの治療歴は、患者様が歯と口腔の健康を維持しようとする過程で直面したさまざまな課題を物語っています。治療を繰り返すことは、一時的に問題を解決することができても、根本的な原因には対処していない場合があります。そのため、これまでの治療経過を詳細に把握し、患者様のお口全体の状態を総合的に評価することが重要となります。
治療を重ねてきた多くの方々が、表面上は何も問題なく過ごしているように見える場合がありますが、実際にはさまざまな問題を抱えていることがほとんどです。特に、噛み合わせの問題や審美性(見た目の美しさ)、歯肉との調和といった重要な要素が過去の治療過程で十分に考慮されずに行われた場合、特定の契機によって口内の様々な部位に不調を引き起こすリスクがあります。これは「木を見て森を見ず」と表現されることもあり、治療が「1歯単位」で行われてしまうことを指します。
このような不調を放置することや、歯が抜け落ちた状態をそのままにしておくことは、将来的に通常の歯科治療では対処が困難になる場合があります。不調が生じている場合、それが表面的には目立たない問題であっても、根本的な口腔の健康を損なう原因となり得るため、早期の対処が求められます。このようにして見逃されがちな問題点に的確に対応し、口内環境を総合的に改善していくことが、包括的な歯科治療の目指すところです。
不具合の具体例
むし歯を何度も繰り返している
歯磨きをしっかりしていても、歯周病が進行する
詰め物、被せ物がすぐに割れる、外れる
顎が痛い
噛み合わせがおかしい、どこで噛めばいいか分からない etc...
このような状況において求められるのが、包括歯科治療のアプローチです。局所的な治療を繰り返しても、根本的な原因に対処しない限り、同じ問題が何度も発生する可能性があります。包括歯科治療では、「1歯単位」の治療ではなく、「1口腔単位」として、お口全体を総合的に評価します。ここでの目的は、全ての潜在的な原因を特定し、それに基づいた治療計画を策定することにあります。
最終的な目標は、患者様がしっかりと噛むことができる状態を回復することですが、それ以上に、治療の再発を防ぐことに重点を置いています。これにより、一時的な対症療法ではなく、長期的な口腔健康の維持と改善を目指します。包括歯科治療により、患者様一人ひとりの口腔内環境に合わせた、より持続可能で効果的な治療が可能となります。
精密検査の必要性
包括歯科治療においては、患者様のお口全体を総合的に診断し、治療計画を策定します。これには、精密な検査を徹底的に行い、お口全体をトータルで考慮することが求められます。このアプローチは、しばしば「歯科ドック」と表現されます。
根本的な原因に対処しなければ、問題を根絶することは不可能です。そのため、包括歯科治療では、全ての原因を明らかにするために徹底的な検査を実施します。
一般的な検査では、主に問題があるとされる部位、または疑問点がある部位に焦点を当てがちです。しかし、包括歯科治療では、問題の全容を把握するために、さまざまな角度から総合的に評価することが重要になります。このようにして、お口の健康を総合的に向上させるための治療計画を立てていきます。
包括歯科治療の進め方
① 1日目:初診・各種検査
ご来院いただいた初日には、まずカウンセリングから始めます。過去の治療履歴や、歯科治療に関するご不安やお悩み、治療に対するご希望など、どのようなことでも遠慮なくお話しいただきたいと思います。また、治療に関する大まかな費用についてのご相談も承ります。カウンセリングの後、簡単な検査を行い、初回のご来院はこれで終了となります。
② 2日目:精密検査(歯科ドック)
通常の歯科検査では、主に問題があると思われる部位に焦点を当てて検査を行うことが一般的です。しかし、歯科ドックの場合は、より広範囲からの様々な視点での検査が必要とされます。このアプローチにより、患者様の主訴以外にも隠れた問題点が発見されることが多くあります。そのため、全体を把握するための精密検査を受けることの重要性があります。これにより、未然に問題を発見し、適切な治療を行うことが可能になります。
- 検査内容 -
・むし歯チェック
・歯周ポケット検査(6点法)
・付着歯肉幅計測
・パノラマエックス線写真
・デンタルエックス線写真14枚法
・正面セファロ撮影
・側方セファロ撮影
・CT撮影
・口腔内写真
・ワックスアップ、セットアップ模型用の型取り
・スタディモデル用の型取り
・フェイスボウ
・咬合採得(咬頭嵌合位・中心位)
・咬合検査
(・唾液検査)
③ 3日目:数パターンの治療プラン・お見積もりのご説明
検査結果とそれに基づく診断、さらに治療計画について、詳細にご説明いたします。治療プランを策定する際、私たちは患者様一人ひとりの具体的な状況、ニーズ、そして経済的な検討を考慮に入れます。例えば、検査結果がインプラント治療が適切であることを示している場合、その選択肢を提案します。一方で、構造的な条件や費用の面でブリッジや義歯がより適していると判断される場合もあります。それぞれの治療方法の利点と制限を明確にし、患者様が自身の状況に最適な選択をできるよう支援します。
加えて、患者様の口腔内で特定されたリスク因子についても詳しく説明します。これには、再発の可能性がある病変、疾患の進行リスクが高い箇所、また将来的に問題を引き起こす可能性がある部位などが含まれます。これらのリスク因子を明らかにすることで、予防策を講じたり、特定の治療方法を選択したりする際の判断材料とします。
治療計画の提示では、患者様が直面する可能性がある各種リスク、治療の期間、予想される結果、そして費用について、透明性を持って情報提供を行います。このプロセスを通じて、患者様に最も適した治療方法を選択していただくための十分な情報と支援を提供することが、私たちの目標です。
④ 4日目以降:治療
治療内容について患者様からご同意をいただいた後、治療を開始します。治療過程は患者様の状態や反応により変化する可能性がありますので、その都度、最適な方法を選択するために、治療プランの見直しを行うことがあります。この見直しは、治療の進行状況、患者様の快適性、そして期待される結果に基づいて行われます。
治療開始後、特定の段階で患者様の口腔内の状態を再評価し、初期の診断に基づいて立てられた治療計画が依然として患者様にとって最良であるかを検討します。この時、新たに発見された問題、治療に対する患者様の反応、または期待される治療結果に対する患者様の満足度など、様々な要素を考慮に入れることが重要です。
また、治療プランの見直しは、患者様との密接なコミュニケーションを通じて行われます。患者様が治療過程における変更点を理解し、新たな治療方針に同意していることを確認することが不可欠です。このような対話を重ねることで、患者様のニーズや期待に応えると同時に、治療の透明性と信頼性を高めることができます。
⑤ 治療終了後:メンテナンスへ移行
治療の全過程が完了した後、終了時には患者様の口腔内の状態を記録するために、口腔内写真、模型、レントゲンなどの資料を取らせていただきます。これらの資料をもとに、改めて患者様の口腔内状態の再診断を行います。この再診断の目的は、治療によって全ての問題が適切に解決されたかを確認することです。全ての問題が解決されたと判断された場合、治療プロセスは次の段階であるメンテナンスへと移行します。
メンテナンスフェーズでは、治療を通じて得られた成果を維持し、再発や新たな問題の発生を防ぐことが目的です。この段階への移行は、患者様が自身の口腔内リスクを十分に理解し、適切なケアを行うための知識とツールを身につけた上で行われます。メンテナンスプログラムでは、定期的な検診やクリーニングを含む個別のケアプランが提供され、患者様一人ひとりのニーズに合わせてカスタマイズされます。
このようにして、治療からメンテナンスへのスムーズな移行を促進し、患者様が健康な口腔状態を長期的に維持できるよう支援します。定期的なフォローアップと適切な口腔衛生習慣の維持により、患者様の口腔健康を最適な状態に保つことが可能となります。
まとめ
咬合再構成治療は、不正な咬み合わせや咬合バランスの問題を修正し、口腔内の機能を回復させる治療方法です。
メリット
1. 機能的改善 : 正しい咬み合わせに改善することで、食べ物を効率よく噛み砕くことができ、消化吸収を助けます。
2. 痛みの軽減 : 不正な咬み合わせが原因で起こる顎関節症や筋肉の痛みを軽減させます。
3. 審美的向上 : 咬み合わせを改善することで、歯並びが整い、笑顔がより美しくなります。
4. 長期的な健康維持 : 正しい咬み合わせによって、歯の過度な摩耗や損傷を防ぎ、長期的な口腔健康を支えます。
プロセス
1. 初診・カウンセリング : 患者様の現在の咬み合わせの状態を評価し、治療の必要性について説明します。
2. 詳細な診断 : レントゲンや口腔内スキャナーなどを用いて、詳細な診断を行います。
3. 治療計画の立案 : 患者様一人ひとりの状態に合わせた個別の治療計画を立案します。
4. 咬合調整 : 必要に応じて、既存の歯の形状を調整したり、欠損している歯を補綴します。
5. 定期的なフォローアップ : 治療後の咬み合わせの状態を確認し、適宜調整を行います。
費用
咬合再構成治療の費用は、治療の範囲や複雑さ、使用する材料によって大きく異なります。一般的に数十万円から数百万円の範囲で変動することがありますが、具体的な費用は初診時の診断後に提案される治療計画に基づいて算出されます。
まとめ
咬合再構成治療は、咬み合わせの問題を根本から解決し、長期的な口腔健康と審美性の向上を目指す有効な治療法です。患者様の具体的な状況に応じた個別の治療計画により、機能的かつ審美的な理想の咬み合わせを実現することが可能です。しかし、治療にはそれなりの時間と費用が必要になるため、治療を検討する際には、十分な説明と相談を通じて、患者様自身にとって最適な選択を行うことが重要です。
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