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- 見た目の良さは当たり前
機能にまでこだわり、長持ちする審美歯科を -
審美歯科治療
- 審美補綴治療でトラブルになりやすい問題 -
目次
① 根管・歯髄(歯の神経)の問題『神経をとられる理由』
1-1 被せ物の自由度を上げるため
1-2 痛みが出ないようにするため
1-3 トラブル防止
② ハグキ(歯肉)の問題
③ 噛み合わせの問題
審美歯科治療とは、文字通り、歯および口元、そして顔貌との調和を重視して、全体を美しく見せるための治療を指します。この治療では、単に見た目を美しくするだけでなく、「機能」と「調和」が重要な要素として求められます。対照的に、見た目の改善のみを目的とした治療は一般的に「美容歯科」と称されることがあります。
専門用語と補足説明
審美歯科 : 歯と口元、そして顔貌との調和を美しくするために、色、形、配置を含む総合的な観点からアプローチする治療分野。
美容歯科 : 主に歯の見た目に焦点を当てた治療。審美歯科よりも狭い範囲での美的改善に注力する。
「木を見て森を見ず」という言葉が示すように、審美歯科治療では、単に前歯の見た目だけに注目して治療を行うと、噛み合わせの問題など、他の部位の問題が原因で治療した前歯に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、治療前にはしっかりとした検査を行い、患者の口腔内の問題点を全面的に理解した上で治療計画を立てることが非常に重要です。
残念ながら、近年は見た目を優先しすぎるあまり、機能性や持続性(どれくらいの期間持続するか)を疎かにする治療が増えています。その結果、治療直後は見た目が改善されたように見えても、数年経過すると問題が顕在化することがあります。
審美歯科治療は、すべての歯科医師が行えるわけではありません。この分野は、審美に特化した知識と技術を持つ歯科医師だけが行える専門的な治療であり、患者様の口腔内全体の健康と美しさを守るために、総合的な視点からアプローチを行う必要があります。
詰め物・被せ物を白いもの(セラミックなど)に変えたい、という方はこちらをご覧ください。
当院の審美歯科治療について


①根管・歯髄(歯の神経)の問題
歯には歯髄(神経)が存在します。
虫歯が歯髄に達していたり、衝撃などで歯髄が損傷した際に、抜髄と言って歯髄を取り除く処置を行うことがあります。
歯から歯髄がなくなると、当然感覚がなくなり、痛みを感じなくなります。
そして歯そのものは、結果的に弱くなります。
被せ物をするだけであれば、基本的に歯髄を取り除く必要はありません。
しかし患者様のお話を聞くと「何も言われずに神経を抜かれた」と言う声が非常に多いです。
そして、その歯髄を抜く際の治療がうまくいかず失敗すると、感染根管、いわゆる根尖部分の骨が溶ける『根の病気』となり、再根管治療が必要となります。
再根管治療では場合によっては被せ物を外す必要も出てきますので、高額な出費であったのにやり直しになることもあるのです。
この再根管治療のご依頼が、審美歯科関係トラブルの来院理由で最も多いです。
抜髄に及んでしまうのには、以下の3つの理由が考えられます。
1-1 被せ物の自由度を上げるため


歯髄がある状態では、歯を大きく削ると歯髄に当たってしまい、痛みが出てしまいます。
そのため歯を削る量が制限されます。
イラスト2枚目にありますように、歯髄を取り除くことで、痛みを感じなくなりますので、歯を大きく削る事ができるようになります。
そうすると、歯の大きさや、角度や向きを大幅に変えることができます。
内側に大きく角度を変えて入れ込むことで、出っ歯の傾向のある噛み合わせを、見かけ上は改善することができます。
しかし歯を削る量が多ければ、それだけ歯の寿命は縮まりますし、図のように切端咬合と言って先端と先端で噛み合うような噛み合わせになってしまうことが多く、歯に非常に負担がかかります。
「歯列矯正で何年もかけなくても、すぐに綺麗になりますよ」
という言葉には注意が必要です。
1-2 痛みが出ないようにするため

歯髄がある状態で歯を削ると、削ったところは風や冷たい水などがしみる症状が出ることがあります。
エナメル質よりも内側の象牙質は感覚があるので、痛みが出るのは当然なのですが、この痛みの程度は歯髄とも関係が大きいです。
歯を削る時に熱などによってダメージを与えてしまうと歯髄が炎症を起こすことがあります。
これを歯髄炎と言いますが、歯髄炎を起こすと痛みが出ます。
歯を削る際にはドリルのような器具を用いますが、これを高速切削器具と言います。
少し前までは『エアタービン』と言って、強風でタービンを回して分速300,000〜500,000回転という速度で削る器具が主流でした。
この器具は「キーン」という高音が出るので、エアタービンの音が歯医者のイメージだと思います。
最近では『5倍速コントラアングル』という器具が主流になりつつあります。
こちらの器具は回転数で削るというよりも、トルク(力)が強く、分速200,000回転でも切削が可能です。
回転数が少ないためブレが少なく安定しやすいというメリット、音が小さいというメリットがあります。
そして回転数が少ないので、摩擦熱が抑えられ、歯髄が熱によって炎症を起こしにくいというメリットがあります。
また、近年よく言われるようになってきた immediate dentin sealing(IDS)という概念です。
こちらは、削って出てきた新鮮な歯面は、しっかりとコーティングして外界から保護しましょう、という方法です。
象牙質には細かい管(象牙細管)が無数にあり、表面から歯髄まで繋がっています。
削りっぱなしにしてしまうと、この象牙細管から細菌が侵入します。そして場合によっては歯髄炎を引き起こします。
IDSは汚染から歯を保護するために、必須の技術です。
1-3 トラブルの防止

上記の歯の痛みが、もしも被せ物を被せた後に起こったらどうでしょうか。
「せっかく高い歯を被せたのに、また外して(或いは穴を開けて)根管治療をしなくちゃならないの!?」
となりませんか?
そういった術後のトラブルを避けるために、歯の感覚を無くしてしまおう、という浅慮な考え方です。
これらの理由や、他にも理由としてはあるかもしれませんが、そういった事情によって歯髄を取ってしまうと、後から歯にトラブルが起こることがあります。
やむを得ない場合は別として、歯髄は保存した方が歯は長持ちします。
②ハグキ(歯肉)の問題
被せ物が合っていない歯では歯肉が炎症を起こします。歯肉の縁が赤かったり、出血しがちであったり、ブヨブヨしている状態です。
これは磨きにくくなるため不潔になったり、生物学的幅径というもの(ややこしいので説明省略)の関係で起こります。
セラミックであっても銀歯であっても、歯と被せ物の境目は、極力段差がないものでなければいけません。
そして、仮歯を用いて歯肉との調和を確認してから、最終的な被せ物に移行しなければいけません。
また、専門的にみると、前歯の歯肉の位置には高低差に一定の決まりがあり、さらに左右対称であることが美しく見える条件です。
さらにブリッジなど、歯がない部分の審美的修復においては、抜歯後には歯肉が痩せて減ってしまうので、出来上がった歯が長く見えてしまうということもあります。
こういった点にも注意を払って、時には歯肉の手術なども併用しつつ、きれいに合わせることが可能です。
初診時年齢:32歳
性別:女性
主訴:前歯の歯ぐきから血が出る
治療期間:1.5年
費用:132万円
治療のリスク:術後の腫れ、痛み
副作用:-
治療内容/装置:精密根管治療4本、歯冠長延長術、前歯6本審美セラミック修復

初診時
4年前に美容整形外科にて『セットバック矯正』という手術を受けられた方です。
前から4番目の小臼歯という歯を全部で4本抜き、できたスペース分だけ骨を切り取って、顎全体を後ろに退げるという術式です。
その際に前歯4本の歯髄を抜き取って、6本をセラミックの被せ物にしましたが、4本中2本が根尖性歯周炎になっていました。
また、セラミックも歯肉とあっておらず、歯肉には炎症が見られます。
まずマイクロスコープ下にて根管治療およびMTAセメントを用いて根管充填を行っています。
その際に被せ物を一旦全て外し、仮歯(テンポラリークラウン)に置き換えています。
この時に少し仮歯を調整し、ガムライン(歯肉の位置・高さ)をある程度合わせています。

根管治療終了・コンテンポラリークラウン装着時

設計・デザイン
ワックスアップ模型にて設計・診断
仮歯まで作ったあとは、治療計画を基に、診断と被せ物の設計をしていきます。
患者様は笑った時に歯茎が見えるガミースマイルで、改善の希望があったため手術を計画しました。

手術(クラウンレングスニングおよび歯根端切除術・逆根管充填)
