近年、包括的な治療を行う機会が増加しております。 包括的治療計画の中に矯正治療と根管治療の双方が同時に組み込まれているケースは非常に多いことと思います。 しかしながら、矯正治療を前提とした根管治療に関して書かれている研究報告は少なく、未だに不明な点が多い領域になります。 そのため、矯正治療と根管治療を別々に考えて治療を行っている事がほとんどであるのが現状です。 ですがこの二つはとても密接な関係にあり、根管治療が上手くいっていない歯では矯正治療後に炎症を引き起こしてしまうという報告もあります。 『Impact of orthodontic treatment on the integrity of endodontically treated teeth』 Alqerban A, Almanea A, Alkanhal A, Aljarbou F, Almassen M, Fieuws S, Willems G. Eur J Orthod. 2018 Jul 4.
矯正治療を行う際に起こる『歯根吸収』をご存知でしょうか。 歯の移動量が大きい場合であったり、硬い骨(皮質骨)に歯根が当たることにより引き起こされます。 この矯正治療を行う際の根管治療、および根管治療をすでにされている歯の扱いをどうするのか、という議論も今までに多く行われてきました。 ある研究では、矯正治療前に根管治療を行い、仮の根管充填剤によって『仮』根管充填を行い、矯正治療が終わってから最終的な根管充填を行う、と報告するものもあります。 しかし、その仮根管充填剤にも欠点があり、長期的な貼薬が歯の強度に影響を与えるという報告があります。 羊の幼弱永久歯における研究ではありますが、半年間の貼薬によって歯の強度が約半分にまで低下するというものです。 そのため、仮根管充填のまま2年間以上の矯正治療を行うことは、とてもリスクがあります。矯正治療前に通常の根管充填を行った場合はどうでしょうか。 下の写真をご覧ください。
根管治療歯が矯正治療によって歯根吸収を起こし、充填剤のみが生体内に突き出す形になっています。 そしてその充填剤の周囲には細菌が潜んでおり、歯根吸収によって顕在化、病変を形成したものと思われます。
この際使用されていた根管充填剤はガッタパーチャというものでした。 ガッタパーチャというものは根管充填剤として古くから使用されてきたものですが、その周囲には非常に細菌による汚染を受けやすいという脆弱性があります。 Swanson & Madison 1987 ; Madison & Wilcox 1988 ; Khayat et al. 1993 ; Jacobson et al. 2002 ; Yazdi et al. 2009
Comments