まず、セルフチェックから
当てはまるものはありますか。ひとつでもあれば、一度検査を受けておく価値があります。
- 歯みがきのときに血が出る
- ハグキが痩せてきた、歯が長くなった気がする
- 歯が揺れる、グラグラする
- 口臭が気になる
- 朝起きたときに口の中がネバネバする
- 昔よりも出っ歯になった、歯並びが変わった気がする
- 歯と歯の間に食べ物が挟まるようになった
- ハグキが腫れたり、ムズムズしたりすることがある
なお、これらが何もなくても歯周病が進んでいることは珍しくありません。令和6年の全国調査では、歯科医師の診査でハグキからの出血が認められた方が42.9%いた一方、「歯をみがくと血が出る」と自覚していた方は6.3%にとどまりました1)。自覚と実態には、これだけの開きがあります。
このページの要点
- 歯周病は「骨の病気」です。ハグキだけの問題ではなく、歯を支える骨が溶けていきます
- 日本人の抜歯原因の第1位が歯周病(37.1%)です。むし歯(29.2%)より多くの歯が、歯周病で失われています2)
- いちど溶けた骨は、基本的には戻りません。だからこそ、進行を止めることが治療の目的になります
- 多くの場合、手術をせずに進行を止められます。歯周基本治療でポケットは平均1.7mm浅くなると報告されています3)
- 「治す」より「管理する」病気です。治療が終わってからのメインテナンスを続けた方は、歯を失うリスクが低いと報告されています4)
- 当院は外科処置まで対応しています。歯周外科を担当する歯科医師が在籍し、フラップ手術から再生療法、下がった歯茎を覆う根面被覆術まで行っています
当院の歯周病治療について
歯周病の治療は、どこで受けても同じというわけではありません。当院がどういう考え方で、何をしているのかを先にお伝えします。
1. 外科処置まで、当院で完結します
歯周病の治療は、歯石を取るところで終わりではありません。深いポケットが残った場合には外科処置が必要になりますが、当院では歯周外科を担当する清水翔太医師が在籍しており、フラップ手術・歯周組織再生療法(エムドゲイン)・根面被覆術まで対応しています。
清水医師は東京医科歯科大学(現・東京科学大学)歯学部を卒業後、同大学顎口腔外科に入局。JIADSペリオコース、エムドゲイン認定研修会を修了しています。詳しい経歴は歯科医師紹介のページをご覧ください。
2. 「なるべく抜かない」を方針にしています
歯周病で歯が揺れてくると、抜歯を勧められることがあります。もちろん保存が難しい歯もありますが、当院はまず「残す方法はないか」から検討します。
動揺のある歯を固定して噛める状態に戻す方法や、下がった歯茎を移植で覆う方法など、選択肢はいくつもあります。他院で抜歯と言われた方のご相談も承っていますので、決める前に一度お聞かせください。
3. 噛み合わせも一緒に診ます
歯周病はプラークだけが原因ではありません。噛み合わせで一部の歯に力が集中していると、そこだけ骨の吸収が進むことがあります。
当院では歯周治療に入る前に、まず動揺の固定と咬合調整から始めます。土台が揺れたまま治療を進めても、思うような結果が出ないからです。
4. 原因を特定するための精密検査があります
保険の歯周検査(6点法)に加えて、CT撮影・細菌検査・咬合検査を組み合わせた「歯周精密検査」もご用意しています(自由診療・35,000円/税抜)。
「なぜこの人は歯周病が進んだのか」が分かると、打つ手が変わります。全員に必要な検査ではありませんが、繰り返し再発している方や、原因がはっきりしない方には有効です。
5. 下がった歯茎を治す方法があります
歯周病で下がってしまった歯茎は、放っておいても戻りません。当院では結合組織移植による根面被覆術(ルートカバレッジ)を行っており、実際の症例をこのページの7-3でご紹介しています。
歯周病の治療は、現在地が分からないと計画が立てられません。当院では1回目のご来院で問診と検査、2回目で検査結果と治療計画を詳しくご説明しています。そのうえで、進めるかどうかをご判断いただけます。
検査と歯周基本治療は保険適用です。「たぶん歯周病だと思うけれど、何をされるか分からなくて不安」という方こそ、一度ご相談ください。
目次
(1)歯周病とは?
歯周病はハグキの病気だと思われがちですが、ハグキが腫れたり赤くなったり出血したり、という病態は『歯肉炎』と言って、ハグキの病気です。
歯肉炎がさらに進行すると、歯を支えている骨にまで影響を及ぼします。歯を支える歯槽骨を溶かしてしまう病態を『歯周病』と言います。つまり歯周病は、骨の病気です。
歯周病がさらに進行すると、歯を支えている骨はどんどん溶けていき、最終的に歯は揺れて、抜けてしまいます。ここまで痛みが出ないまま進むことも多く、サイレントディジーズ(Silent Disease:静かなる病気)と言われています。
どのくらいの人が歯周病なのか
「日本人の8割が歯周病」という言葉をよく見かけますが、これは少し大げさな言い方です。厚生労働省も、この数字は「歯石が少しでもついている人」まで含めた割合であり、大げさな捉え方だと説明しています1)。
実際の数字はこうです。令和6年の歯科疾患実態調査で、4mm以上の歯周ポケットがある方は15歳以上で47.8%。年代別に見ると、こうなります1)。
| 年代 | 4mm以上のポケットがある人の割合 |
|---|---|
| 30代 | 約27%(4人に1人) |
| 40代前半 | 28.6% |
| 40代後半 | 41.4% |
| 50代 | 44〜54% |
| 60代 | 54〜59% |
| 80代前半 | 61.6%(最も高い) |
8割ではありませんが、40代後半から急に増えて、50代以降は2人に1人という数字です。決して他人事ではありません。
(2)進行度別に、何が起きているか
歯周病は、進み方によって対応も見通しも変わります。ご自分がどのあたりにいるかを知っておくと、治療の話が分かりやすくなります。
| 段階 | お口の中で起きていること | 主な治療 |
|---|---|---|
| 歯肉炎 | ハグキだけの炎症。骨はまだ溶けていない。みがくと血が出ることがある | 歯みがき指導とクリーニングで元に戻せる段階 |
| 軽度(3〜4mm) | 骨が溶け始めている。自覚症状はほとんどないことが多い | 歯周基本治療(スケーリング・歯みがき指導) |
| 中等度(4〜6mm) | 骨が3〜5割ほど失われている。ハグキが下がる、口臭、出血 | 基本治療+ルートプレーニング。改善しなければ外科を検討 |
| 重度(6mm以上) | 骨が半分以上失われている。歯が揺れる、噛みにくい、膿が出る | 基本治療+歯周外科。歯によっては保存が難しいことも |
※ポケットの深さはあくまで目安のひとつです。実際の診断は、レントゲンでの骨の状態、出血の有無、歯の動揺度などを合わせて行います。
大事なのは、いちど溶けた骨は基本的には元に戻らないということです。だから歯周病の治療は「元通りにする」ことではなく、「これ以上進ませない」ことが目的になります。早い段階で見つかるほど、失うものが少なくて済みます。
(3)放置するとどうなるか
いちばん多い「歯を失う原因」です
8020推進財団が全国の歯科医院を対象に行った抜歯原因の調査(2018年)では、抜歯の原因はこうなっていました2)。
| 抜歯の原因 | 割合 |
|---|---|
| 歯周病 | 37.1%(第1位) |
| むし歯 | 29.2% |
| 破折(歯が割れる) | 17.8% |
| その他・埋伏歯・矯正など | 15.9% |
「歯を失う病気」といえばむし歯を思い浮かべる方が多いのですが、実際にいちばん多くの歯を奪っているのは歯周病です。しかも痛みが出にくいぶん、気づいたときには手遅れになりやすい。
糖尿病とは、お互いに影響し合っています
歯周病と糖尿病には双方向の関係があることが、国際的なコンセンサス文書でも示されています5)。糖尿病の方は歯周病が進みやすく、歯周病があると血糖のコントロールが難しくなる、という関係です。
逆に言えば、歯周治療によって血糖の指標が改善することが報告されています。35の臨床試験をまとめたコクランのレビューでは、歯周治療から3〜4か月後の時点でHbA1cが平均0.43%(95%信頼区間 0.28〜0.59%)低下していました6)。
この数字は「歯周治療をすれば糖尿病の薬が減らせる」という意味ではありません。追跡期間は最長でも1年で、糖尿病の合併症が減ったかどうかまでは分かっていません。それでも、糖尿病の治療を受けている方にとって、歯周病を放置しない理由としては十分だと考えています。
心臓や血管の病気とも関連が報告されています
ヨーロッパ歯周病連盟と世界心臓連合の合同コンセンサスでは、歯周病のある方は冠動脈疾患や脳卒中のリスクが高いことが、疫学研究から一貫して示されているとされています7)。
ただしここは慎重に書きます。「歯周病を治せば心筋梗塞や脳梗塞を防げる」とまでは言えません。同じコンセンサス文書が、それを裏付ける研究はまだ存在しないと明記しています。喫煙・血圧・血糖といったリスク管理とあわせて、歯周治療とメインテナンスを続けることが勧められている、というのが現時点で正確な言い方です。
(4)歯周病は治るのか
いちばん多いご質問です。そして、いちばん誤解の多いところでもあります。
日本歯科医学会は、歯周治療のゴールを2つに分けて定義しています12)。
| 状態 | 定義 |
|---|---|
| 治癒 | 歯周ポケットが4mm未満で、ハグキに炎症がない状態 |
| 病状安定 | 4mm以上のポケットは残っているが、炎症がコントロールされている状態 |
つまり、「ポケットがゼロになること」だけがゴールではありません。深いポケットが残っていても、炎症が抑えられて進行が止まっていれば、その歯は長く使えます。実際、多くの患者様が目指すのはこの「病状安定」です。
一方で、失われた骨が元通りに戻るわけではありません。下がったハグキも、自然には戻りません(外科的に覆う方法はあります。7-3の根面被覆術をご覧ください)。
ですので当院では、こうお伝えしています。歯周病は「治して終わり」ではなく、「進行を止めて、その状態を維持していく」病気です。そのために、治療が終わってからのメインテナンスが治療そのものと同じくらい大事になります。


