こんにちは!Hatch Dental Clinic 院長の平沼です。
「ラミネートベニアって、どのくらい歯を削るんですか?」
——これ、本当によく聞かれます。そしてこの質問はとても大事です。ラミネートベニアは表面を薄く削って貼る治療なので、削る量が結果を大きく左右します。
今回ご紹介する症例で削った量は、最大0.5mmでした。ただ、大事なのは数字そのものより「なぜその量に収まったのか」です。実際の工程写真とあわせてお話しします。
- 削る量は「勘」で決めません。完成形を先に作り、そこから逆算して削ります
- モックアップ(完成形を口の中に再現したもの)の上から、決まった深さの溝を入れて削ります。これで削る量が「完成形からの引き算」になります
- 今回の切削量は最大0.5mm。ゼロにはできません。エナメル質に接着面を確保するために必要な量です
- 矯正治療と組み合わせると、削る量はさらに減らせます。今回は他院の矯正医と連携したケースです
実際の症例:30代女性・前歯4本のラミネートベニア
他院で矯正治療を受けられた患者様です。ただしこの矯正は、はじめから「そのあとラミネートベニアで形を整える」ことを前提に計画されたものでした。矯正の担当医と当院とで、ゴールを共有したうえで進めています。
患者様:30代・女性
主訴:矯正後の前歯の形を整えてほしい
治療内容:上顎前歯4本のラミネートベニア
治療期間:2ヶ月
費用:480,000円(税抜)/税込528,000円(1本120,000円・税抜 × 4本)
主なリスク・副作用:歯の切削が必要なこと(切削量は最大0.5mm)、セラミックの破折・欠け・脱離、治療中の一時的な知覚過敏、支台歯の二次う蝕、将来的な歯ぐきの退縮により歯との境目が見えてくる可能性、噛み合わせの状態によっては適応とならない場合があること。
この治療は自由診療(保険適用外)です。治療期間および結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
※矯正治療は他院で行われたものです。※費用は治療当時のものです。現在の料金は料金表をご覧ください。
なぜ矯正だけでは終わらないのか
「矯正したのに、まだ何かするんですか」と思われるかもしれません。
矯正治療は歯を並べることはできますが、1本1本の歯の形や大きさそのものを変えることはできません。もともと歯の幅にばらつきがある場合、きれいに並べても、隣の歯との間にわずかな隙間が残ったり、大きさが不揃いに見えたりします。
逆に、この状態をベニアだけで解決しようとすると問題が起きます。歯の位置がずれている分を、セラミックの厚みでごまかすことになるからです。結果として削る量が増えるか、歯が前に出っ張った仕上がりになります。
だから、矯正の段階から「最後にベニアを貼る」ことを見込んで歯を並べておく。そうすればベニアは形を整えるだけで済み、削る量が最小限になります。今回はその設計でした。
いきなり削らない。まず完成形を作る
では本題です。削る量をどうやって決めるのか。
結論から言うと、削る前に完成形を作ってしまいます。
まず模型の上で、完成後の歯の形をワックスで作ります。これをワックスアップと呼びます。噛み合わせも含めて模型で検討し、「どういう形にするか」をこの段階で決めきります。
次に、そのワックスアップの形を削る前のお口の中にそのまま再現します。これがモックアップです。
この段階で患者様ご本人にも鏡で見ていただけます。まだ歯を1mmも削っていない状態で、仕上がりを見て相談できる。ここがこの方法の大きな利点です。「もう少し短く」「もう少し丸く」といった希望も、この時点なら反映できます。
モックアップの上から削る=削った量が目に見える
ここがこの治療のいちばんの肝です。
モックアップを付けたまま、その上から決まった深さの溝を入れます。写真に見える横線がその溝です。
こうすると何が起きるか。削る量が「完成形からの引き算」になります。
モックアップは完成後の形そのものです。そこから一定の深さだけ削れば、セラミックに必要な厚みぶんだけが確保される。歯そのものを見ながら「これくらいかな」と削るのとは、精度がまったく違います。
逆に言えば、モックアップなしで削ると、どうしても「多めに削っておこう」という判断になりがちです。足りないと作り直しになるからです。完成形が先にあれば、その心配がなくなります。
なぜ「まったく削らない」ではダメなのか
「削らないほうがいいなら、ゼロにできないんですか」と聞かれることがあります。
答えは「できるが、おすすめしない」です。理由は接着にあります。
セラミックをしっかり接着させるには、エナメル質に接着面を確保する必要があります。歯の表面をまったく触らずに貼ると、接着が弱くなり、剥がれやすくなります。また厚みを確保できない分、セラミックを歯の外側に盛ることになるので、歯が出っ張って見えたり、歯と歯ぐきの境目に段差ができて汚れが溜まりやすくなったりします。
つまりこの0.5mmは、長くもたせるために必要な切削です。削らないことが目的ではなく、必要な最小限に留めることが目的だと考えています。
そして、エナメル質の中に収まる範囲で削れているかどうかが分かれ目です。削りすぎて象牙質が広く露出すると、接着の条件は一気に悪くなります。モックアップから逆算する意味は、まさにここにあります。
仕上がり
治療期間は2ヶ月でした。矯正で歯の位置が整っていたおかげで、ベニア側は形を整えるだけで済んでいます。
ラミネートベニアが向かないケース
正直にお伝えすると、ラミネートベニアはすべての方にできる治療ではありません。次のような場合は、被せ物など別の方法をご提案します。
・歯ぎしりや食いしばりが強い方——薄いセラミックには不利な力がかかります
・エナメル質が大きく失われている歯——接着の条件が整いません
・大きな詰め物が入っている歯——接着できる面積が足りないことがあります
・歯の位置のずれが大きい場合——ベニアの厚みでごまかすと、削る量が増えます。まず矯正を検討します
「ベニアでできますか」というご相談をいただいたとき、お断りすることも実際にあります。できない理由と、代わりに何ができるかをご説明したうえで判断していただいています。
よくある質問
ラミネートベニアはどのくらい歯を削りますか?
今回ご紹介した症例では最大0.5mmでした。ただし歯の状態によって変わります。当院ではモックアップ(完成形を削る前のお口の中に再現したもの)の上から深さの溝を入れて削るため、削る量が「完成形からの引き算」になり、必要最小限に抑えられます。
まったく削らないラミネートベニアはできますか?
技術的には可能ですが、当院ではおすすめしていません。セラミックをしっかり接着させるにはエナメル質に接着面を確保する必要があり、まったく削らないと接着が弱く剥がれやすくなります。また厚みを歯の外側に足すことになるため、歯が出っ張って見えたり、歯ぐきとの境目に段差ができて汚れが溜まりやすくなったりします。
削る前に仕上がりを見ることはできますか?
できます。当院ではモックアップという工程を行っており、歯を削る前の状態で完成形をお口の中に再現し、鏡で確認していただけます。この段階であれば形や長さのご希望も反映できます。
矯正治療は必要ですか?
歯の位置のずれが大きい場合は、先に矯正で歯を並べたほうが削る量を減らせます。今回の症例も、他院での矯正治療を経てからラミネートベニアを行いました。ずれが小さい場合はベニアだけで対応できることもありますので、検査のうえでご説明します。
費用はどのくらいですか?
当院のラミネートベニアは1本120,000円(税抜)/132,000円(税込)からです。本記事の症例は4本で480,000円(税抜)/528,000円(税込)でした。自由診療(保険適用外)です。詳しくは料金表をご覧ください。
ラミネートベニアはどのくらいもちますか?
個人差が大きく、一律にお答えすることはできません。ただしエナメル質の範囲内で削り、しっかり接着できているかどうかが持ちを左右します。歯ぎしりや食いしばりのある方は破折のリスクが上がるため、必要に応じてナイトガードをおすすめしています。定期的なメンテナンスを前提とお考えください。