こんにちは、浦安のHatch Dental Clinicです。
歯を失ったときの治療法というと、「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3つが一般的によく知られています。近年、これらに続く選択肢として名前を聞くようになったのが「ヒューマンブリッジ」です。今回は、この治療法がどういうものなのか、そして裏付けとなるエビデンス(研究データ)はどこまであるのか、を整理してみます。本記事の内容は、当院でヒューマンブリッジを担当する清水医師が監修しています。
ヒューマンブリッジとは
ヒューマンブリッジは、歯を失った部分の両隣にある歯を支えにして、人工の歯を橋渡しするように装着する治療法です。従来のブリッジと大きく違うのは、支えにする歯を削る量です。
一般的なブリッジは、支台歯(支えになる歯)のエナメル質をほぼ全周削り、その下の象牙質を露出させてから被せ物を作ります。一方ヒューマンブリッジは、隣接歯の裏側にごく細い溝を数カ所つける程度の切削にとどめ、エナメル質の大部分を残したまま、特殊な接着材とパーツで人工歯を固定します。麻酔も不要なケースが多く、外科的な手術(歯ぐきを切ったり骨を削ったりする処置)は行いません。
治療の大まかな流れは次の3ステップです。
1. 両隣の歯の裏側にわずかな溝を形成する
2. 専用の金属パーツを装着する
3. 人工歯をはめ込んで接着する
通院回数が少なく、比較的短期間(数回の通院)で完了するのも特徴です。インプラントの手術が体質や持病(心疾患・高血圧・糖尿病など)の理由で難しい方や、入れ歯の着脱に抵抗がある方の選択肢として紹介されることが多い治療法です。
エビデンスはどこまであるのか
ここが今回一番お伝えしたいポイントです。「ヒューマンブリッジ」という商品名そのものを対象にした大規模な長期研究は、現時点では見当たりません。ただし、この治療は歯科の世界で「接着性ブリッジ(レジンボンドブリッジ:Resin-Bonded Bridge, RBB)」と呼ばれる、支台歯の切削量を最小限にして接着材で固定するタイプの補綴治療の一種にあたります。このカテゴリーについては、国際的にまとまった研究データが存在します。
生存率に関する代表的な研究
歯科補綴の分野でよく引用される研究の一つに、スイス・ベルン大学のPjeturssonらによる系統的レビュー(2008年)があります。1965年から2007年までに発表された複数の臨床研究を統合し、この報告では接着性ブリッジの5年生存率が約88%と算出されています。
その後、2017年に発表された別の系統的レビューでは、より新しい研究データを統合した結果、5年生存率は約84%、10年生存率は約65%という予測値が示されました。失敗の主な原因は、被せ物が外れてしまう「脱離」で、全体の失敗のおよそ8割を占めるとされています。
さらに2013年のBritish Dental Journal掲載のレビューでは、ブリッジの構造(金属フレーム/ファイバー強化型/オールセラミック)によって年間の失敗率に差があることも報告されています。金属フレームタイプで年間4.6%前後、オールセラミックタイプではやや高めの年間11.7%前後という数値が示されており、素材選びが長期的な安定性に影響することが示唆されています。
何が読み取れるか
これらの研究結果から言えるのは、接着性ブリッジ全般について「短期~中期的には十分実用に耐えるが、外れる(脱離する)リスクは他の治療法よりも相対的に高め」ということです。ヒューマンブリッジもこのカテゴリーに属する治療法である以上、同様の傾向を念頭に置く必要があると考えられます。
一方で、通常のブリッジやインプラントの10年生存率(それぞれ約89%、約87%という報告もあります)と比べると、接着性ブリッジはやや数値が下がる傾向にあるものの、外科手術を伴わないという大きなメリットがあります。つまり「長期的な安定性」と「体への負担の少なさ」のどちらを優先するか、という判断軸で考える治療法だと言えます。
こんな方に向いている治療法
・全身疾患などでインプラント手術のリスクが高い方
・入れ歯の違和感や着脱の手間を避けたい方
・健康な歯をできるだけ削りたくない方
・前歯など、強い咬合力がかかりにくい部位での欠損
逆に、奥歯のように強い力がかかる部位や、長期的な安定性を最優先したい場合は、通常のブリッジやインプラントとの比較検討が必要です。
まとめ
・ヒューマンブリッジは、支台歯の切削量を抑えた接着性ブリッジの一種
・手術不要・通院回数が少ないのがメリット
・同カテゴリーの研究では5年生存率80%台、10年で60%台という報告があり、脱離が主な失敗要因
・通常のブリッジ・インプラントと比べると生存率はやや下がる傾向だが、体への負担は小さい
・適応部位・全身状態によって向き不向きがあるため、個別の診断が重要
どの治療法にも一長一短があります。ご自身の歯の状態や生活スタイルに合わせて、当院でも一緒に最適な選択肢を考えていきますので、気になる方はぜひ診療時にご相談ください。
料金は料金表ページにも掲載しております。
参考文献
1. Pjetursson BE, Tan WC, Tan K, Brägger U, Zwahlen M, Lang NP. A systematic review of the survival and complication rates of resin-bonded bridges after an observation period of at least 5 years. Clin Oral Implants Res. 2008;19(2):131-141.
2. Predictability of resin bonded bridges – a systematic review. British Dental Journal, 2017.
3. A review of the success and failure characteristics of resin-bonded bridges. British Dental Journal, 2013.