こんにちは。Hatch Dental Clinic歯科医師の平沼です。
「同じセラミックのはずなのに、医院によって値段が全然違う」「インプラントの見積もりが、他院と何十万円も差がある」——そんな疑問を持つ患者さんは少なくありません。実はこの価格差には、材料のグレードや技工士の技術力、治療にかける工程の丁寧さなど、いくつもの理由があります。今回は、あくまで私個人の見解として、セラミックとインプラントを例に、費用が医院ごとに異なる理由を歯科医師の視点から解説します。
- 自由診療の価格は各医院が自由に決めてよいものです。価格が違うこと自体は、おかしなことではありません
- 差が生まれる主な要因は「材料のグレード」「技工士の技量」「かける工程と時間」の3つです
- 同じ「セラミック」でも、セラミック専門の技工士に依頼するかどうかで技工料金は2〜3倍変わります
- インプラントはメーカー・サージカルガイドの有無・上部構造の質で差が出ます
- ただし「高ければ安心」とも限りません。日本では価格と技術が必ずしも比例していないのが実情です
- 価格だけでなく、治療方針・材料・説明の丁寧さ・症例実績という中身を見てください
歯科医院ごとに費用が違うのはなぜ?
確かに、同じような治療に見えても、医院によって価格に差があることは少なくありません。このことについて、あくまで『私個人の見解』として、よく聞かれるところの『セラミック』と『インプラント』について、それぞれお話ししていきます。ご興味がある方はお付き合いください。
今回のテーマのきっかけとなった出来事
先日、「おたくのクリニックではセラミックでブリッジにすると費用はいくらかかるの?」というお電話をいただきました。当院ではセラミックのクラウンに関しては
| セラミッククラウンの種類 | 費用(税抜・1本あたり) |
|---|---|
| ジルコニア単色ブロック | 100,000円 |
| ジルコニアマルチレイヤー | 120,000円 |
| e-Max | 120,000円 |
| ジルコニアポーセレン | 150,000円 |
※咬合再構成など全顎治療の場合は別途となります。最新の費用は料金表をご確認ください。
という費用をベースとして扱っています(咬合再構成など全顎治療を除く)。ブリッジでは3本分以上となるので「10万円×本数分〜になります」とお答えしたところ、「高いから他でやる」というお返事をいただき、それで終わりとなりました。それ自体は別に構わないのですが、値段の違いがどうして起こるのかという点は患者さんにとって非常に伝わりにくい部分かと思いますので、今一度この機にお伝えできればと思ったのです。
「高い・安い」は何で決まるのか?〜セラミックの場合〜
まず大前提として
自由診療(自費診療)における費用は、各クリニックが自由に決めてよい
つまり、価格が違うのは「ダメなこと」でも「おかしなこと」でもないのです。
ですが、患者さんからすれば
「同じ“セラミック”って言ってるのに、なんであっちは〇万円、こっちは〇〇万円なの?」
という疑問が湧くのは当然のことと思います。
実はこの『同じセラミック』という言葉の中には、
・材料のグレード
・技工物の精度
・技工料金の違い
・担当技工士の技量
・製作工程
・使用する接着システムおよび工程
・診査診断
・設計
・術後のメンテナンス
などの細かい要素がたくさん詰め込まれています。
保険治療と自費治療の違いにおいても、材質を含め、こういった点が大きく関わってきます。
せっかく高額なセラミックで治療するのに、
かける時間も回数も、保険治療と同じでも大丈夫ですか?
実際問題として、保険診療がほとんどを占めている歯科医院の場合は、
保険診療と同じ工程で施術し、保険治療の補綴物がメインの技工所に製作を依頼する事が多いです。
そのため、
『せっかく高いお金を出してセラミックにしたのに、数年で割れてしまった』
『見た目が本物の歯と違う』
『歯ぐきが腫れたまま治らない』
などのトラブルが発生する事が多いのです。
少し深掘りしていきます。
細かい部分について全て説明するのは難しいので、分かりやすい部分をいくつかピックアップして解説します。
例えば前歯の場合
1番見た目に関わる部位ですので、最も良いものを選ばれる患者さんが多いです。その時にまず仮歯を作りますが、仮歯にはテンポラリークラウンとプロビジョナルレストレーションの二種類があります。「その場しのぎの仮歯」がテンポラリークラウン、「最終的なクラウンを想定した仮歯」がプロビジョナルレストレーションです。
プロビジョナルレストレーションで半年以上煮詰める事もあります。その間に、見た目を調整したり、噛み合わせをみたり、歯ぐきとの調和を確認したりと、やる事が多いのです。したがって、最終的な精密な型取りの前に調整が何回か挟まりますので、仕上がるまでに時間がかかるということです。回数が増えれば、費用もかかってしまいます。回数や費用を少なくしたい、という需要もありますので、そういった場合には、即日で被せ物ができるという歯科医院も増えてきておりますから、お探しになってもいいかもしれません。
そしてこの仮歯を最終補綴(被せ物)にいかに上手に仕上げるか、
これは歯科技工士の手に委ねられるのです。
技工士(デンタルテクニシャン)の違い
最終的な被せ物の製作は、歯科技工士の方に依頼します。当然ですが人間の手で作られますので、技術の差がかなり明確に出ます。普段からセラミックを専門で製作している技工士(セラミストと呼ばれます)でないと、いいものは出来ません。そして当然のことながら、製作費用も高いです。2倍〜3倍、あるいはもっと違う事もあります。これも、最終的な被せ物の費用の違いに大きく関わります。
例えるならカレー?ラーメン?
上手い例えとは言えないかもしれませんが、同じ「カレーライス」でも、レトルトカレーと、高級スパイスを数十種類使ってじっくり煮込んだカレーとでは、同じカレーでもまったく別物ですよね。歯科の自費診療も、まさにそれと同じようなことが起こっているわけです。かける時間も倍以上、かかるコストも倍以上であれば、最終的な費用が違ってくるのはご理解いただきたい部分です。
インプラントの場合は?
こちらも、費用が歯科医院によって全く異なりますので、よく分からないまま施術を行う患者さんが多いのではないでしょうか。インプラントの方が被せ物よりもちょっとわかりやすいかもしれません。
・製造メーカー
・サージカルガイドの有無
・上部構造(被せ物)の質
によって費用が異なってきます。安いメーカーを使用し、サージカルガイド(CT上で設計したポジションを口腔内にトランスファーするための装置)を使用せず、上部構造のクラウンを安い技工所に依頼して、仮歯などで試運転をしなければ、当然費用を浮かせることができますので、患者さんからいただく費用も安く済ませることができますよね。そして被せ物に関しては、インプラントの上部構造では近年は主にセラミックを使用します。そのため、前述したセラミックの費用の違い問題も発生するという事です。それぞれのコストは大きく違わないとしても、さまざまな処置が積み重なる事で最終的な見積もり金額に差が出ます。
高ければ安心、とは限らない理由
さて、「それじゃあ、治療費が高い歯科医院に行けば安心なのか?」というと、残念ながら必ずしもそうとは言えません。たしかに、高度な治療技術や専門的な知識・経験に裏打ちされた歯科医院では、それ相応の費用がかかるのが自然な流れです。しかし現実には、“なんとなくの相場”に合わせて価格を設定している医院や、治療内容とは関係なく利益を多く上乗せしているようなケースも存在します。日本では、そうした価格設定が混在しており、実力のある医院とそうでない医院の費用が、あまり変わらないという状況が起きてしまっているのです。
欧米諸国、たとえばアメリカでは、専門性が高く、豊富な経験と技術を持つ歯科医院には自然と相応の治療費がかかります。価格と技術のバランスがある程度成立しており、「高い=それなりの理由がある」という構図が成り立っています。しかしながら、日本にはそうした“医療の価値に見合った価格”という考えが根付きにくく、これから劇的に変わることも、あまり現実的ではないかもしれません。
だからこそ、患者さん側でも「価格」だけで判断するのではなく
・治療に対する考え方
・使用する材料の質
・丁寧な説明と相談のしやすさ
・実際の症例や実績
といった“中身”をしっかり見極めることが、とても大切になってくると私は思います。当院でも料金表や治療の考え方を公開していますので、医院選びの参考にしていただければ幸いです。
今回は少しデリケートな話題を取り上げましたが、日頃から私が感じていることを率直に書いてみました。ここまで読んでくださりありがとうございます。
- 費用:セラミッククラウンは1本あたり100,000円〜150,000円(税抜)/110,000円〜165,000円(税込)です。インプラント治療の費用は術式・使用するメーカー・上部構造により異なります。詳細は料金表をご覧ください。いずれも自由診療(保険適用外)です
- セラミック治療のリスク:健康な歯質を削る必要があります。強い衝撃や過度な咬合力により破折することがあります。装着後にしみる症状が出る場合があります。適合が不良だと二次むし歯や歯肉の炎症が生じることがあります
- インプラント治療のリスク:外科処置に伴う腫れ・痛み・出血、感染、周囲の神経や血管の損傷、インプラント周囲炎、骨との結合が得られない場合の再手術などがあります。全身疾患や喫煙習慣により適応外となる場合があります
- 共通:治療後は定期的なメンテナンスが必要です。結果には個人差があり、効果を保証するものではありません
よくある質問
同じ「セラミック」なのに、なぜ医院によって値段が違うのですか?
「セラミック」という言葉の中に、材料のグレード、技工物の精度、担当する技工士の技量、製作工程、使用する接着システム、診査・診断、設計、術後のメンテナンスといった多くの要素が含まれているためです。
特に大きいのが技工士の違いです。セラミックを専門に製作する技工士(セラミスト)に依頼すると、技工料金は2〜3倍、あるいはそれ以上になることもあります。この差が最終的な費用に反映されます。
自由診療の値段は、医院が自由に決めていいのですか?
はい。自由診療(自費診療)の費用は各医院が自由に設定してよいものです。したがって、医院ごとに価格が異なること自体は「おかしなこと」でも「問題のあること」でもありません。
大切なのは、その価格に何が含まれているのかを患者さんが理解したうえで選べることだと考えています。
安いセラミックだと、何か問題がありますか?
必ず問題が起きるわけではありませんが、「せっかく高い費用を払ったのに数年で割れてしまった」「見た目が天然歯と違う」「歯ぐきが腫れたまま治らない」といったご相談は実際に少なくありません。
保険診療がほとんどを占める医院では、保険治療と同じ工程で処置し、保険補綴物をメインに扱う技工所へ製作を依頼することが多くなります。かける時間・回数・技工の質が価格に反映されている、とお考えください。
インプラントの費用は何で決まりますか?
主に「インプラント体の製造メーカー」「サージカルガイドを使用するかどうか」「上部構造(被せ物)の質」の3つです。
安価なメーカーを使い、サージカルガイドを使わず、上部構造を安価な技工所に依頼し、仮歯での試運転を行わなければ、費用は抑えられます。一つひとつの差は小さくても、積み重なることで最終的な見積もりに大きな差が生まれます。
高い医院を選べば安心ですか?
残念ながら、必ずしもそうとは言えません。高度な技術と経験に裏打ちされた医院では相応の費用がかかるのが自然ですが、現実には「なんとなくの相場」に合わせて価格を設定している医院や、治療内容と関係なく利益を上乗せしているケースも存在します。
日本ではこうした価格設定が混在しており、実力のある医院とそうでない医院の費用があまり変わらない、という状況が起きています。価格だけでなく、治療方針・材料の質・説明の丁寧さ・症例実績といった中身をご確認ください。
費用を抑えたい場合、どうすればいいですか?
まず、保険診療で対応できる範囲を確認することをおすすめします。当院は自費専門の医院ではなく、保険診療も通常どおり行っています。
また、費用や回数を抑えたいというご要望に応える形で、即日で被せ物を製作する医院も増えています。ご自身が何を優先したいのか(費用・期間・仕上がり・耐久性)を整理したうえで、それに合う医院を選ぶのがよいと思います。
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